本人以外の人が任意整理をすることができるケースとは
任意整理は政務整理の一つで、借金の返済に困った時に利用する手続きです。 任意整理が本人以外でもできるのか、保証人と連帯保証人にはどういった違いがあるのか、今回の記事ではご紹介しています。 これから任意整理を検討している人は、ぜひ参考にしてみてください。
任意整理とは何か
任意整理とは、裁判所を介せず債務者と債権者との間で、利息のカットや支払いを延ばすなどの交渉をし、借金を圧縮する方法です。 任意整理は借金がなくなるわけではありませんが、手続き後は毎月の支払いが無理のない金額になり生活を立て直すことができます。 特定の業者を対象から外すこともできるなど、債務整理の中でも比較的自由度が高い手続きです。 ただし、毎月の返済が発生するため安定した収入のある方が主に利用できる方法となります。 任意整理の手続きのなかで、利息制限法による利息の引き直し計算を行います。取引が長期間にわたっている時は引き直し計算の結果過払い金が発生している場合があり、その際は過払い金の返還請求を行う事ができます。
任意整理は本人以外が行うことはできない?
本人以外は任意整理を行うことができない
任意整理は借金のある本人が行うことが原則です。 借金の情報は個人情報にあたるので、本人の同意がなければたとえ家族や仲の良い友人であっても教えてもらうことはできません。 そのため本人以外が任意整理を行おうとしても、必要な書類を用意することができないということになります。 任意整理を本人以外が行う際は本人の同意を得るか、本人と話し合うことが必要になってきます。手続きは本人以外が行うことは不可能ですが、専門家への相談だけなら家族でも可能です。
任意整理の代理人は弁護士か司法書士
任意整理を本人以外が行えるのは、弁護士や司法書士などの専門家が本人から委任を受けて代理で行う場合です。 任意整理を弁護士や司法書士に依頼する際には「委任契約」を結ぶことになりますが、この時に「委任状」が必要になります。 委任状とは、委任契約を結ぶ際に債務者に代わり弁護士に代理人としての権限を委任することを記した書類です。 委任状には日付、委任者の名前・住所・印鑑、代理人の名前・住所、委任事項を記入します。 委任状は本人が直筆で作成する必要がありますが、用紙や書式は問われません。 委任契約を交わすと弁護士が債権者に対し受任通知を送ることができるようになります。 受任通知を送ると取り立ては無効となるので、債権者から債務者に対しての取り立てや電話でのしつこい催促もなくなります。
委任状があれば本人以外の家族でも任意整理をすることができる
任意整理は原則本人以外が行うことはできませんが、特別な事情がある場合は委任状があれば家族や友人でも報酬を受け取らないことを条件に手続きを行うことができます。特別な事情とは、借金をしている本人が病気などで身動きが取れない場合などが当てはまります。 また債務者本人が認知症などで自身で判断できない場合は、家庭裁判所に後見人として選定されていれば債務整理の手続きを行うことが可能です。 ただし、素人が任意整理の交渉をしても、貸金業者は弁護士などの専門家以外はほとんど相手にしてくれないのでメリットはありません。 そのため家族の借金を何とかしたい時には、借金のある本人を説得して任意整理を勧めることが一番早い解決法になります。
本人以外からの代理人の依頼はできない
任意整理は本人以外が代理人となって、弁護士や司法書士などの専門家に依頼することは基本的にはできません。 また任意整理を専門家に依頼する際は依頼者本人との面談が義務付けられていて、本人が専門家と直接契約を交わす必要があります。 このことから本人に任意整理をする意思があるかということが大事なポイントになります。 借金をしている本人が面談を拒否したり委任状を書くのを拒んでいるうちは、任意整理の手続きは進められません。 本人の同意があれば代理人が手続きをすることも可能ですが、委任状が必要になるので本人が任意整理に前向きでない場合は説得するしか方法がありません。 ただし専門家への相談は本人以外でも可能で、手続きに関する一般的なアドバイスなどは受けることができます。
任意整理は弁護士と司法書士どちらに依頼したほうが良い?
弁護士と司法書士の違い
弁護士と司法書士の違いは、扱える案件の金額にあります。 司法書士は、1つの金融業者からの借金額が140万円以下でないと依頼を受けることが出来ません。 弁護には際限がありませんので、140万円以上であっても依頼を受けることが可能です。 また、過払い金の受け取り金額も140万円がボーダーラインとなっています。 任意整理の結果に納得がいかない場合、裁判を行うこともあります。 弁護士は依頼者の代わりに代理として裁判に出席することが出来ますが、 司法書士は地方裁判所以上の代理人にはなれません。 ただし、簡易裁判所であれば代理人として出廷することが可能です。
借金額が140万円以上かどうかで見極める
任意整理を弁護士と司法書士のどちらに依頼しようか迷ったときは、借金額が140万円以上かどうかを参考にしましょう。 借金額はトータルではなく、1つの金融業者につき140万円かどうかということです。トータルで考えてしまわないように注意してください。 いくつかの金融業者から借金をしている場合、任意整理だけでは毎月の返済が困難な額になってしまうこともあります。 そのようなときは、自己破産や民事再生など、ほかの債務整理に切り替える必要性も出てきます。 司法書士は任意整理以外の債務整理をすることは出来ません。 そのため司法書士に依頼をする場合は、ほかの債務整理をする可能性が低いことを確認してから行ってください。 費用を少しでも抑えたい気持ちは分かりますが、どれだけ費用が安くてもしっかりと交渉をしてくれなくては意味がありません。 自分にとってどちらが良いのか、無料相談をいくつかの事務所で行ってから決めるようにしましょう。
保証人と連帯保証人の違いとは?
保証人、連帯保証人はどちらも、債務者が返済を怠った場合に備えて債務保証を行う人を指します。 債務に対する人的担保という位置づけです。 両者の違いは責任の重さにあります。 保証人には、催告の抗弁権、検索の抗弁権、分別の利益という3つの権利が認められていますが、連帯保証人にはこれがなく債務者と全く同等の立場で債務を履行しなくてはなりません。 催告の抗弁権とは、まずは債務者に請求してくれと言える権利です。 最初は債務者の財産や収入から手を付けてくれと言えるのが検索の抗弁権です。 分別の利益とは保証人が複数いた場合、債務総額を保証人の数で均等割りした金額を返済義務の上限とするものです。 金融機関から借金をする際に締結する「金銭消費貸借契約」の契約書には、保証人に関する設定を記載する欄があります。 この契約書で言われている保証人とは借主と「連帯して」債務を履行する者を意味しており、保証人とは書かれていても内容は連帯保証人のことを指しています。
任意整理をした時の連帯保証人へ影響について
任意整理をすると保証人へ請求が行く
任意整理を行うと、連帯保証人に返済請求がきます。 連帯保証人は債務者の代わりとして借金の返済をすると約束した人のことなので、債務整理の後に受ける影響も債務者本人と同じです。 先に説明したように、連帯保証人は金融業者などの債権の請求には債務者に請求するよう対抗する権利や、債務全額に対する請求をされても拒否ができません。
保証人に迷惑をかけないための方法
債務整理を行った場合、連帯保証人に返済の請求はきますが、任意整理の場合であれば保証人への請求を除外できる方法があります。 任意整理は他の方法と違って裁判所を通さないで行う私的な方法なので、複数の業者から借金をしている場合、交渉をする金融業者を選ぶことができます。 そのため、連帯保証人の付いている債務だけをはずして任意整理をすることで影響を与えずに済みます。 連帯保証人の付いていない借金にだけ任意整理を行い、連帯保証人の付いている借金の返済に充てるという方法も有効です。 しかしこのやり方は、債務者に返済能力がある場合に限られます。 なお、任意整理を弁護士や司法書士などに依頼をすると「連帯保証人の有無」は必ず聞かれます。
任意整理時に連帯保証人へ請求が行ってしまった時の対応
連帯保証人付きの任意整理をどうしても行わなければならない時には、連帯保証人に返済の請求がいき、保証人は支払いを拒否することができません。 もし、連帯保証人にも支払うことができない場合には2つの方法で対処が可能です。 1つは、保証人自身も個別に任意整理を行うという方法です。 手順としては、主たる債務者と同じです。 2つは、債務者と保証人が連名で任意整理を行う方法によって請求を除外する方法です。この場合、主たる債務者が金融業者との間にその旨の合意が得られているという条件が必要になります。 また、連名で任意整理を行うということは保証人も債務者と同じ立場となります。 したがって、保証人についてもブラックリスト入りしてしまうので注意しましょう。
任意整理をした時の家族への影響
任意整理を行っても家族に影響はありません。 債務整理とは、債務者への制裁ではなく、経済的に立ち直らせるための救済を目的とした制度だからです。 特に任意整理の場合は自己破産や個人再生とは異なり、家や車などの財産が差し押さえられるということもありません。 しかし、家族が連帯保証人の場合には通常の連帯保証人と同様の立場となるので、返済の請求がきます。 なお配偶者が連帯保証人の場合、離婚をしてもその義務はなくなりません。
本人が借金を残して亡くなってしまった場合どうなる
相続人が債務を継承する
本人が借金を残して亡くなってしまった場合、その借金はどうなるのかというと相続人に遺産として相続されます。 遺産はプラスの財産だけではなく、負の財産に関しても相続の対象になるからです。 しかし、本人が亡くなり相続人にとって無関係な借金を相続するというのは不測な出来事であり、法律の上では相続人に選択権が与えられています。 この選択権とは相続を承認するか、相続を放棄するかの2択になります。 相続を放棄すると亡くなった本人の借金を相続人が支払う必要は無くなります。 ただし、プラスの資産などにおいても相続放棄することになってしまいますので注意しなければなりません。 いずれにしても、借金があったかどうかをよく調べて相続するかどうかを決めることが必要です。
任意整理の前に相続放棄を検討する
亡くなった本人に借金が発覚した場合で、相続人が借金を支払うことが出来ないという時には任意整理をする前に相続放棄を検討することが大切です。 相続放棄は、借金などのマイナスの財産が大きい場合に相続を放棄することで借金を相続しないというものです。 相続放棄は、相続の開始である被相続人が亡くなった日から3ヶ月以内に家庭裁判所に相続放棄の申述をすることで行なえます。 この3ヶ月の期間のことを熟慮期間と呼ぶのですが、熟慮期間を過ぎてしまうと相続放棄をすることが出来なくなってしまいますので注意しなければなりません。 また、熟慮期間中にどのような資産や負債があるか分からない場合には熟慮期間の延長も可能です。 プラスとマイナスどちらが多いのか分からない場合には限定承認という方法もあります。 相続放棄を行う際は他の財産も手放すことになるので財産の内容をよく見て判断することが大切です。
過払い金が発生している可能性もある
本人が亡くなった後に借金の存在が明らかになり、支払うことが出来ないので相続放棄を検討するという方もいるでしょう。 しかし、2007年以前から借金をしていた場合には過払い金が発生していて、過払い金によって借金の返済を行うことが可能なケースもあります。 借金の内容をよく確認して、過払い金が発生していないかどうかは必ず確認しなければならないポイントです。 もし、過払い金は発生していた場合には借金していた期間などにもよりますが、完済することが出来るだけではなく払い過ぎたお金が現金として返ってくるケースも少なくありません。 過払い金の有無に関しては取引履歴を取り寄せることで自分でも確認することが出来ますし、専門家に調べてもらうことも可能です。
まとめ
任意整理は基本的に債務者本人以外が行うことが出来ない手続きです。 また、本人と委任契約を結べば弁護士や司法書士が法的代理人として任意整理を行うことができます。 もし、家族や恋人などの本人以外が任意整理を行う場合には、「委任状」を提出することができれば可能です。 なお、弁護士か司法書士のどちらに依頼をすればいいかを選ぶポイントは、借金額140万円を超えるかどうかです。 司法書士が任意整理で扱える金額は140万円以下と定められているという点を必ず確認しましょう。 保証人がいる場合に債務者本人が任意整理を行ってしまうと、保証人に返済の請求がいきます。 保証人に迷惑をかけないためには、保証人のついていない借金の任意整理がオススメです。
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